「学習支援の不登校」が生まれないために

子どもの貧困や貧困の連鎖が社会的課題としての認識が高まり、学習支援が支援として注目を集めています。

これは素晴らしいことではあるんですが、若者支援も、困窮者支援もやってきた私としては、「これ大丈夫?」とちょっと心配になることも。

厚生労働省の生活困窮者自立支援制度の紹介によれば、
「子どもの学習支援をはじめ、日常的な生活習慣、仲間と出会い活動ができる居場所づくり、進学に関する支援、高校進学者の中退防止に関する支援等、子どもと保護者の双方に必要な支援を行います。」
ということになっています。

若者支援者として注目したいのは「居場所」というキーワードです。

どんなに大人たちが「貧困の連鎖大変だ!」「子どもたちのために!」と気合を入れても、子どもたち、若者たちがその場を自分の居場所と感じ、通ってきて初めて支援が可能になるわけです。

この「居場所」については、不登校やひきこもりの居場所論を通じて何十年と議論されてきているので、私が改めてそれを語るまでもないと思います。

重要なのは、「子ども、若者が、自らの居場所として”認識する”」という主観性や、その認識を持つに至っている場や人との関係性の問題であり、「将来の我が国の未来が云々」というような天下国家の話でも、「子どもの元気な声の響く地域に」というような地域活性化の話でも、「子どもの人権」と言ったような理念の話でもないということです。(どれも大切な話ではありますが)

そこを押さえておかないと、子どもたち自身が制度や社会運動から置いていかれちゃって、それこそ「学習支援の不登校」が生まれてしまうんじゃないか、と思います。

どうか、大人たちの事情や熱い想いはちょっと置いておいて、まずは子どもたち、若者たちと向き合ってもらえたらと思います。

私が理事を務めるNPO法人パノラマは神奈川県立高校で、ぴっかりカフェという取り組みをしています。これは、私たちインクルージョンネットよこはまがパーソナル・サポート・サービスという生活困窮者自立支援制度の源流の一つであるモデル事業をしていた時に、「相談」と改まって待っていても高校生とはつながれないので、学校生活の中で自然に交流しながら彼らと関係性を作り、いろんなことを話していこう、という「交流相談」の取り組みを始めたものがスタートです。
(交流相談については私たちの論文をご参照ください)

パーソナル・サポーターとして最初に学校に入った現パノラマ理事長の石井正宏が、そのような取り組みじゃないと意味がない、と言ってスタートしたのですが、実は大変だったのが石井さんの相方になる相談員の配置です。

難しいんですよ、高校生と関係性作るの。しかも、授業とか相談という場面設定を外したところで。

結局紆余曲折あってパーソナル・サポート全体の事業統括だった私が行くことになったんです。

で、やっとハマったんですよね。
(その時のことを石井さんがパノラマ理事紹介で書いてくれています)

考えてみると、石井さんも私もひきこもりの居場所やってた経験があって、たぶんその辺りでの関係性の作り方、一緒に日常を過ごす過ごし方、日常から必要なら相談・サポートするっていう場面への持っていき方なんかが、体に染み付いてるんじゃないかと思ったんですよね。

地域で支援が必要なのは、大人が思う「正しさ」に乗れない子どもたち、若者たちなんだと思うんです。ただの経済問題ではない。その正しさに乗れなくて、苦しくて、それで学校や社会や地域に居場所を持たない存在だと思うので。

「サードプレイス理論」のオルデンバーグは「最も重要だけど、実現が難しいのが若者のサードプレイス」っていうようなことを言ってるんですよね。

どうか、この新しい学習支援という取り組みから本当に支援を必要としている子どもたち、若者たちが溢れていきませんように。